まとめ

 ここまででみてきたように、犯罪、すなわち刑事事件が成立するかどうかは、構成要件該当性を判断し、違法性が阻却されないか、責任が阻却されないかという観点も丁寧に検討していく作業によって決まります。もちろんここでご紹介したのは、犯罪の成立に関する大きな枠組み及び大原則にすぎないので、各箇所で多様かつ複雑な論点がありますし、ここでは紹介しきれない制度も数えきれないほどあります。

 ちなみに、構成要件に該当し、違法性阻却事由や責任阻却事由もなく犯罪が成立するとしても、処罰されない場合もあります。一つ具体例をあげると処罰阻却事由などと呼ばれるもので、一つ例を挙げると刑法244条1項の親族相盗例がこれに当たります。これは配偶者や同居の親族といった近しい関係の者との間で窃盗をしたとしても、刑を免除するという制度です。この趣旨は法は家庭に入らずなどと言われ、窃盗の場合、身内を処罰する必要性が小さく、各家庭に任せたほうがより良い解決につながる可能性が高いと考えられているためです。
 以上のように、刑法にはいろいろな事情で犯罪が成立したとしても、減軽したり免除したりする規定があるので、そうした規定に対する理解も必要だと言えるでしょう。

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